YOSHIDA SHIHO
Like finding river in this room
Like finding river in this room
吉田志穂にとって「東京」のイメージとは、子供の頃に高速道路から眺めた景色の印象が強い。住んでいた千葉県から東京へ向かう際に通る東京湾アクアラインは、海面下約60メートルまで潜るトンネルで木更津市と川崎市をほぼ一直線に結んでいる。アクアブリッジと海上に浮かぶ「海ほたる」サービスエリアを経て、約9.5キロも続く東京湾アクアトンネルをようやく抜けた先の高速道路からの眺めは、目線が高くなって気持ちがよく、そこから見える工場やビル群を「綺麗な風景」だと感じていた事が記憶に残っているという。
2021年1月、都内にある吉田の勤務先がビルの10階に移転した。それまで、ほとんど水が流れていない暗い川しか見えなかったが、10階からは車が流れていく高速道路を見下ろす形で眺められるようになった。1962年に開通し今では全長約340キロメートルという長さで東京と周辺地域に張り巡らされた首都高速道路のルートはもともと、多くがお堀や水路として使われていた場所である。そのような都市の成り立ちを軸に、今回吉田は高速道路の流れを「川」や「水」と繋がるようなイメージとして、いつも撮影している風景と同じような形で撮影することを試みた。
本作「Like finding river in this room」は、都内に残る釣り堀や川などを撮影した写真と高速道路のライブカメラ映像を水越しに重ね、約30秒ほどの映像作品群として制作された。