I can (not) hear you
細倉は東京に暮らす若者に声をかけ、お気に入りの曲を聴いてもらいながら踊るようにリクエストをする。三脚でカメラを固定し、ヘッドホンやイヤホンで音楽を聴きながらリズムに合わせて身体を震わせるその動きを捉える。日本、台湾、香港、中国などアジアの国々に生きる若者の姿を捉え、作品として発表してきた細倉の新作《I can (not) hear you》はこうして制作された。
ポートレートはその人物の内面を写さない。しかし(だからこそ)私たちは写真に写るその姿にその人物の実存や内面を見出そうとしてきた。こうした主題の延長線上にあると思われる本作において、私たちは音楽を聴くことができず、曲名すらもわからない状態で、彼らが自由に身体や、自由に着飾った衣服やアクセサリーを揺れ動かすのを見ることとなる。彼らの身体を通して、それを突き動かす音楽の鼓動を想像する。そうした時にこの驚くほど豊かな細部は、現代の都市を突き動す、生々しい触感を私たちに伝える。
細倉真弓
東京在住。立命館大学文学部、及び日本大学芸術学部写真学科卒業。 セクシュアリティとジェンダーをベースに人種や国籍、人と動物や機械、有機物と無機物など「かつて当たり前であったはず」の境界を再編する作品を制作している。 主な個展に「NEW SKIN」(2019年、mumei、東京)、「Jubilee」(2017年、nomad nomad、香港)、「Cyalium」(2016年、G/P gallery、東京)、「クリスタル ラブ スターライト」(2014年、G/P gallery、東京)、「Transparency is the new mystery」(2012年、関渡美術館2F展示室、台北)、グループ展に「小さいながらもたしかなこと」(2018年、東京都写真美術館、東京)「Close to the Edge: New photography from Japan」(2016年、Miyako Yoshinage, NY)、「Tokyo International Photography Festival」(2015年、 Art Factory Jonanjima, 東京)、「Reflected-works from the Foam collection」(2014年、Foam Amsterdam、アムステルダム)など。
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制作協力:和田哲郎(FNMNL)
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